後知恵バイアスとは【そうなると思っていた】

目次

後知恵バイアスとは

後知恵バイアスとは、物事の結果を知った後に「そうなると思っていた」と感じる傾向ことです。

後知恵バイアスが働く原因

後知恵バイアスが働く原因の1つは、以前考えたことを思い出そうとするときに、現在の知識や情報が影響してしまうためです。

過去のことを思い出す時に、現在の知識や情報を完全に切り離して考えることができません。思い出そうとする内容が現在の知識に引っ張られ、結果的に「後出し」をしたようになってしまいます

これは、認知バイアスの「アンカリング効果」の影響もあります。

 参考記事⇒アンカリング効果とは【事前に見た数値に答えが近寄る】

後知恵バイアスの応用例

失敗の分析

「事務作業のミス」「工場作業でのポカミス」「車の運転のミスによる交通事故」など、世の中には様々な失敗があります。

人間は失敗する生き物なので、失敗をゼロにすることは不可能です。ただ、同じ過ちを繰り返さないよう、失敗を振り返り分析することは大切です。

過去の失敗を振り返って分析をするとき、後知恵バイアスに十分気を付ける必要があります。

後で振り返ると「なんでこんな失敗が起きるんだ?」と思うことがありますが、それはまさに後知恵バイアスです。

失敗には、背景があります。後知恵バイアスはそれらを無視しやすくなる方向に働きますので、後知恵バイアスの影響を受けると適切な分析ができなる恐れがあります。

部下への指導

部下への指導をおこなう際に、過去を振り返って指導を行うことがあると思います。

過去の業務について悪い評価をして指導を場合、後知恵バイアスに気を付ける必要があります。

「あの時の業務の進め方が●●だった」

「もっと●●すべきだった」

このように感じることがあると思いますが、それらは後知恵バイアスではないと言い切れますか?

指導を行う際は後知恵バイアスの十分注意が必要です。

株価や為替の解説

株価や為替は日々値動きしています。

ニュースなどでは、

「●●による影響で株価が下落しています」

「●●を受けて円安が進んでいます」

などの解説が、日々されています。

果たしてこの解説、正しいのでしょうか?

そして、これらは後知恵バイアスの影響をどれほど受けているでしょうか?

株価も為替も様々な思惑による売買によって値段が決まります。

その売買の際に理由の説明を求められるわけではありませんので、値動きの正確な理由や背景につては、本来は誰もわかりません。

わかるのは値動きの結果だけです。

値動きの結果を見て最も適切そうな解説を行っているということになります。

結果を見て理由を説明する、これはまさに後知恵バイアスが生じやすい環境です。

後知恵バイアスの実験

水難事故の予測可能性

実験方法概要

実際に射流洪水が発生した事例を用いて、洪水の発生を予測することができたかどうかを評価してもらう実験です。

(射流とは水深が浅く流速が非常に速い水の流れや津波の流れのことです)

実験参加者に洪水発生前の写真を見せ、洪水の発生を予測できるかどうかを答えてもらいます。

このとき、Aチームは洪水が発生した事実を知った状態で予想をしてもらいます。

一方、Bチームは洪水が発生した事実を伝えずに予想をしてもらいます。

参考文献:山 祐嗣,秋田真志,川﨑拓也, 水の濁り判断と射流洪水の確率判断における後知恵バイアス―裁判の証言ための検証実験

実験参加者へ洪水の発生メカニズムを説明

実験参加者に洪水の発生メカニズムを説明します。

河川の濁りが洪水発生の予兆になることを説明し、今から河川の写真を見てもらい、予想してもうらことを伝えます。

写真を見せて結果を予想してもらう

Aチーム

Aチームは「この写真は実際に洪水が起きる直前の写真です。ただし、あなたはその事実を知らなかったと仮定して判断してください」と伝えて実験を開始します。

実験は、実験参加者に河川の写真を見せ、「河川の濁り」と「洪水が発生する確率」を評価してもらいます。

Bチーム

Bチームは洪水が発生した事実は伝えずに実験を開始します。

その他はAチームと同様の方法で実験を行います。

実験結果

「河川の濁り」について、Aチーム(洪水が発生したことを知っているチーム)の方が「濁っている」と判断する傾向がありました。

また、「洪水が発生する確率」についても、Aチーム(洪水が発生したことを知っているチーム)の方が「洪水発生率が高い」と判断する傾向がありました。

ニュースに関するアンケートの実験

心理学者のバルーク・フィッシュホフが行った、ニュースに関するアンケートの実験があります。

実験の概要

1972年にアメリカのニクソン大統領が中国を訪れて毛沢東主席との会談を行いました。

当時、東西冷戦を背景にアメリカと中国は対立関係にあったため、このニュースは衝撃でした。

実験では、このニュースについてのアンケートにより実施されました。

事前アンケート

大学の学生を対象に、ニクソン大統領が訪中する前にアンケート調査を行いました。

アンケートの内容は

「ニクソン大統領は毛沢東主席に会いに行くか」

「ニクソン大統領は訪中を成功だったと発言するか」

といったこと予想するもの15項目について、実際に将来起きる可能性を答えてもらいました。

事後アンケート

ニクソン大統領が実際に訪中した後、事前アンケートと同じメンバーを集めて、再びアンケートを行いました。

内容は「前回のアンケートの際に、自分がどのような確率を予想したか」を答えてもらいました。

その結果

「実際に起きたことの確率は事前の予想よりも高く」

「実際には起きなかったことの確率は事前の予想よりも低く」

答える傾向がありました。

この結果により、学生は事実に合わせて事前に予測した確率の記憶を後出しで修正したことがわかります。

後知恵バイアスの参考文献

 ⇒ファスト&スロー あなたの意志はどのように決まるか?【参考文献紹介】

 ⇒think smart【参考文献紹介】

 ⇒認知バイアス見るだけノート【参考文献紹介】

 ⇒人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている【参考文献紹介文】

 ⇒think right【参考文献紹介】

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