皮肉過程理論とは
皮肉過程理論とは、ある事柄について考えないように努力すればするほど、そのことが頭から離れなくなってしまう現象のことです。
皮肉過程理論の例
皮肉過程理論の例を紹介します。
寝る前に嫌なことから頭から離れない
寝る前に嫌なことを思い出してしまい、寝れなくなることありませんか?
考えないようにしようしと努力すればするほど、頭から離れなくなりますよね。この現象ことが「皮肉過程理論」です。「考えないようしよう」という努力が、結局はそのことを考えてしまいます。
サザエさん症候群
「サザエさん症候群」という言葉をご存知ですか?「サザエ症候群」とは、日曜の夕方に「翌日からまた仕事や学校にいかなければならない」という現実に直面して憂鬱な気分になることです。
この「サザエさん症候群」に陥った時に、「明日のことを考えないようにしよう」と無理に努力すると「皮肉過程理論」の罠にハマってしまいます。
暇だとネガティブになる
人間は基本的にネガティブです。これは、人類の進化の過程である程度ネガティブに物事を捉える方が自然界での生存競争の中で有利だったため、その遺伝子が今も残っているためだと考えられます。
皮肉過程理論の実験(シロクマ実験)
皮肉過程理論の有名な実験として、シロクマ実験と呼ばれる実験があるので紹介します。
シロクマ実験の概要
アメリカの心理学者ダニエル・ウェグナーが1987年に「シロクマ実験」と呼ばれる実験を行いました。
参加者に対して「シロクマについて考えてください」や「シロクマについて考えないでください」と指示した時に、実際にシロクマについて思いついた回数を測定しました。
グループA(「ケース1:まず考える」→「ケース2:考えないようにする」)
グループAは、まず最初に「シロクマについて5分間考えてください」と指示され、思いついたことを口に出してもらい、そのうちシロクマに関することを口にした回数を測定しました。(ケース1)
その後、「シロクマについて5分間考えないようにしてください」と指示され、同じように思いついたことを口に出してもらい、シロクマについて思いついてしまった回数を測定しました。(ケース2)
グループB(「ケース3:考えないようにする」→「ケース4:考える」)
グループBはグループAとは逆に、最初に「シロクマについて5分間考えないようにしてください」と指示され、思いついたことを口に出してもらい、シロクマについて思いついてしまった回数を測定しました。(ケース3)
その後「シロクマについて5分間考えてください」と指示され、思いついたことを口に出してもらい、そのうちシロクマに関することを口にした回数を測定しました。(ケース4)
シロクマ実験の結果
上記「ケース1」から「ケース4」の中で、シロクマについて最も多くのことを思いついたのは「ケース4」でした。
つまり、シロクマについて考えることを一旦我慢し、その後にシロクマについて考えたケースが、最も多くのことを思いつきました。
この結果は、シロクマについて考えないようにし続けるためには、逆にシロクマのことを考え続ければならないことから起きていると考えられます。
皮肉過程理論と上手に付き合うために
皮肉過程理論を回避するためには、「何かを考えないようにする」のではなく「別のことを考えるようにする」ことが効果的です。
例えば、何か悩み事ある時は書き出すと良いと言われています。これは、「文字を書く」という行動はある程度集中力が必要であり、文字を書くことに集中することで、結果的に悩み事が頭から離れるためです。悩み事以外の別のこと(文字を書くこと)に集中することで、悩み事への意識を弱める効果があります。
また、悩み事がある時は運動するのも良いと言われています。これも上記と同様です。運動に集中することで、頭の中を注意力を「悩み事」から「運動」にシフトさせています。
これらのように、何かを考えたくない時は、今目の前のことにしっかりと全力で取り組むことがおススメです。そうすることで、余計なことを考えずに済みますし、目の前の行動のパフォーマンスが上がるという効果もあります。
今、目の前のことを大切にしましょう!
皮肉過程理論の参考文献
・ニュートン2023年2月号