確率加重関数とは
確率加重関数とは、小さな確率を過大評価し、大きな確率を過小評価する傾向のことです。
とても小さな確率である宝くじが当たる可能性を過大に期待し、99.9%大丈夫な落雷などのリスクを過剰に心配することです。
確率加重関数の境界点
確率加重関数は35%を境にバイアスの方向が変わります。すなわち、35%より低い確率については本来よりも高く評価し、反対に35%よりも高い確率については本来よりも低く評価します。
確率荷重関数の例
宝くじ
「○○ジャンボ」「ロト○○」「toto」「スクラッチ」「ナンバーズ」など、様々な宝くじがあります。
宝くじを買うかどうかは人それぞれですが、宝くじを買うとワクワクしますよね。
なぜ宝くじを買うとワクワクするのでしょうか?それは、可能性が低いことは頭ではわかっているものの「もしかしたら当たってるかもしれない」と感じているからです。
期待値を考えたら宝くじを買うのは合理的ではありませんが、少額で楽しむ分には確率加重関数を活用してコストパフォーマンスの高い遊びと考えることもできます。
ちなみに、宝くじが当たる可能性の目安は以下の通りだそうです。
ジャンボ宝くじ:1000万分の1
年末ジャンボ宝くじ:2000万分の1
toto BIG:480万分の1
ロト6:600万分の1
将来の夢
将来の夢はありますか?
大人になると「将来の夢」のようなことを考える機会が減りますが、たまには時間を確保して考えることをお勧めします。色々と気づきがあって面白いですよ。私は30代後半ですが、今でも「将来の夢」を持つように努力しています。
さて、本題に入りますが、「将来の夢」と聞くとどのようなことを思い浮かべますか?自分が子供の頃の夢や今の子供たちが思い描いている夢など、様々な夢があります。
「将来の夢」の例としてよく出てくるものとして「プロスポーツ選手」「動画投稿者」「歌手」「アイドル」「漫画家」「eスポーツ選手」「お笑い芸人」などがありますが、これらに共通する点として「現実的に実現する可能性がかなり低い」ということがあります。
夢を持つことは素晴らしいこととされていますが、現実って気に実現する可能性がかなり低い夢を持っている人がたくさんいます。実現する可能性がかなり低いということを頭では理解している一方、感覚としては「自分の夢が叶う可能性がわずかながらある」と信じています。これこそが「確率荷重関数」によるものです。
確率荷重関数だけではなく認知バイアス全般に言えることですが、認知バイアス自体は決して悪ではありません。認知バイアスによる判断は論理的な判断ではないというだけです。認知バイアスが存在するおかげで夢を追いかけることができますし、認知バイアスがあるおかげで夢を掴める人がいます。
認知バイアスは人類にとって必要であり、認知バイアスがなければ人類がここまで繁栄することはなかったと言えます。
雷が怖い
「雷恐怖症」をご存知ですか?
「雷恐怖症」とは、雷を原因とする不安障害で、雷鳴を聞くことでパニックになったり心拍数の上昇が表れる恐怖症です。
余談ですが、私も雷が大の苦手で、医者の診断を受けたわけではないですが雷恐怖症ではないかと思っています。世の中で一番怖いものは雷だと思っています。
ここから本題に入りますが、実際に落雷により死亡する可能性はどの程度かご存知でしょうか?落雷によって死亡する確率はかなり低く、100万分の1程度と言われています。これは、宝くじのロト6で2等(約1000万)が当たるのとほぼ同じ確率です。
雷によって死亡する確率が明らかになっている現代社会において、「自分に雷が落ちるのではないか?」と落雷のリスクを過剰に考えて怖がる行為は「確率荷重関数」による認知バイアスと言えます。
飛行機が怖い
「飛行機恐怖症」をご存知ですか?
「飛行機恐怖症」は、墜落への恐怖、閉所への恐怖、高所への恐怖、死ぬ恐怖、状況をコントロールできない無力感、テロへの不安などが入り混じったものであるとされています。
実際に飛行機による死亡事故に遭遇する確率がどれ程かご存知でしょうか?飛行機による死亡事故に遭遇する確率は、アメリカの場合200万分の1程度と言われています。
飛行機事故の可能性はかなり低いにも関わらず、飛行機恐怖症の方は一定数いらっしゃいます。「飛行機が墜落するかもしれない」という事象の確率を過大評価して過剰に怖がる行為は「確率荷重関数」による認知バイアスと言えます。
確率加重関数と関係がある認知バイアス
利用可能性ヒューリスティック
確率加重関数に類似する認知バイアスとして、「利用可能性ヒューリスティック」があります。利用可能性ヒューリスティックとは、思い浮かびやすい事象は起きやすいと判断する傾向です。
「思い浮かびやすい事象」のよくある例が「衝撃的な事故」や「様々な業界で大活躍する」などがあります。これらはいずれも確率は非常に低いですが、「利用可能性ヒューリスティック」および「確率加重関数」の効果により、実際よりも高確率で実現可能と錯覚します。
生存者バイアス
生存者バイアスとは、物事を分析する際に失敗例を無視し、成功例だけに着目してしまう現象のことです。
確率荷重関数により成功する確率を過剰に見込む場合に生存者バイアスが働きやすくなります。
世の中には成功した人の情報が溢れています。成功した人はメディアなどに取り上げられますし、書籍などでも残ります。「確率加重関数」により成功する確率を過剰に見込み、世の中に溢れている成功者の情報に基づく判断を行うことにより「生存者バイアス」が働くことになります。
ポジティブバイアス
ポジティブバイアスとは、自分は平均以上だ、自分は大丈夫だと考える傾向のことです。
こちらも、確率荷重関数により成功する確率を過剰に見込む場合に働きやすくなります。
「確率加重関数」により成功する確率を過剰に見込み、「ポジティブバイアス」により「自分は成功する」と過信する現象が発生します。
確率加重関数と上手に付き合うために
確率加重関数と上手に付き合うために、まずは確率加重関数の存在を認めることです。人間は自分が思っている以上に確率判断が苦手です。頭では確率をわかっているつもりでも、実際の行動・判断には反映できていません。
論理的な判断が求められる場合には確率荷重関数の存在に十分留意して正確な確率計算による判断をすべきです。
一方、非論理的な「夢」「希望」「挑戦」といったシチュエーションの場合は確率加重関数の影響は無視して、自分が信じた道を突き進むべきです。確率加重関数は人類の進歩のためには必要な認知バイアスです。
最後に私個人の話になりますが、今の私は100万分の1の確率の雷を過剰に怖がりながら、100万分の1以下の確率の宝くじの当選を期待して購入する行為を行っています。認知バイアスのブログを執筆している私が、認知バイアスにどっぷりと浸かっていることがよくわかる実例ですね。改めて認知バイアスは強力です。やはり認知バイアスは奥が深いですし、認知バイアスと上手に付き合っていきたいものです。