傍観者効果とは
傍観者効果とは、援助が必要とされる状況において、傍観者の存在によって援助行動が抑制されることです。
目の前で人が倒れたときに、周りに人がいないときはすぐに助けに行くにもかかわらず、周りに人が大勢いるときは「誰かが助けるだろう」と考えてしまう効果です。
傍観者効果の原因
傍観者効果が生じる理由として、「責任の分散」「社会的影響」「評価懸念」があると言われています。
責任の分散
責任の分散とは、援助への責任が複数の傍観者の存在に分散されることです。自分しかいなければ「助ける責任が自分にはある」と感じますが、複数名いる場合はその責任が分散され、結果的に1人1人が感じる責任が少なくなります。
社会的影響
社会的影響とは、誰も援助しないことを観察することで、援助の必要性を低く見積もってしまうことです。
「誰も助けない」
→「本当に助けが必要なら誰かが助けるはず」
→「助けが必要な状況ではない」
という思考回路により、援助する必要がないという判断につながります。
評価懸念
評価懸念とは、援助することで他者からネガティブに評価されることを気にして援助をためらうことです。
援助をしたいという思いはあるが、その行動をした時に周囲がどう感じるかを考え、ネガティブに評価される可能性を気にして援助をしないという判断につながることです。
「いい格好をしようとしている」
「魅力的な異性だから手助けをしている」
「助けるフリをして本当は違う狙いがある」
これらのようなことを周囲に思われることを懸念し、援助ができなくなります。
傍観者効果の例
電車で席を譲る
「電車で困っている人がいたら席を譲りましょう」とよく言われますが、実際に席を譲った経験はどれほどありますか?
私は譲った経験があまりありません。電車で明らかに席を譲った方が良さそうな人がいたとしても、「誰か譲るだろう」「すぐにどこかの席が空くだろう」と考えてしまいます。まさに「傍観者効果」と言えます。
言い間違いを指摘する
ミーティング等で、漢字の読み間違いや人の名前の間違いなど参加者誰もが明らかに気づくような誤りを何度も繰り返す人に対して、間違いを指摘することはできますか?
間違いを繰り返している本人のためを考えるとすぐに指摘した方が良いに決まっているのですが、「わざわざ指摘しなくても何となくわかるし」「細かいことを指摘する面倒なやつと思われたくない」「誰かが指摘するだろう」と考えて、結局指摘しないまま変な空気のミーティングが続いてしまうことがあります。
これも「傍観者効果」の一例と言えます。
社会の窓が空いてますよ
「社会の窓が空いてますよ」と人に言えますか?なかなか言えませんよね。これも傍観者効果の例と言えるかもしれません。
かなり恥ずかしい状態なので、一刻も早く伝えてあげるのが最も相手のためになることは明らかですが、伝えるのには勇気がありますし、伝えるにしてもタイミングを図りますよね。
「今言わなくてもいつか誰かが言うだろう」
「自分は気付かなかったことにすれば良い」
などと考え、伝えることを躊躇する、これはまさに「傍観者効果」です。
傍観者効果に陥らないために
人を助ける場合は
困っている人を助けるためには、傍観者効果の影響を排除することが望ましいです。傍観者効果の影響を完全に排除することは困難ですが、影響を軽減するための考え方として、「人を助けるのは1秒でも早い方が良い」と言うことを理解すると良いでしょう。
困っている人・苦しんでいる人が目の前にいたら、その悩み・苦しみを少しでも早く解決することが最も良いに決まっています。「善は急げ」です。
人に助けてもらう場合は
傍観者効果の影響を軽減して人に助けてもらうためには、「指名する」というテクニックがとても有効です。
「誰か助けてください」は誰も助けてくれませんが、「あなた、助けてください」と言われて助けない人はほぼいません。
ほとんどの人は良心を持っており、困っている人を助けたいという思いを持っています。ただ、その思いが「傍観者効果」により発揮出来ていないだけです。
「指名する」というテクニックは、救命講習などの場でも指導されている方法であり、確実に効果があります。助けを求める場合は、是非このテクニックを活用してください。