アンカリング効果とは【事前に見た数値に答えが近寄る】

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アンカリング効果とは

アンカリング効果とは,何かの値を推定する前に,比較対象としての値(アンカー) を提示すると、その後に推測する値がアンカーの値に近くなる現象のことです。

アンカリング効果の実験

国連に属している国のうちアフリカ大陸にある国家の割合の推定

「国連に属している国のうちアフリカ大陸にある国家の割合は何%程度か?」を推定する課題です。

参考文献:A.Tversky,D.Kahneman. Judgment under Uncertainty: Heuristics and Biases.

1.実験参加者へ質問する

 実験参加者に国連に属している国のうちアフリカ大陸にある国家の割合について質問をします。

1-1.Aチームへは「65%よりも大きいと思うか?」と質問

 Aチームへは「国連に属している国のうちアフリカ 大陸にある国家の割合は 65%よりも大きいと思うか小さいと思うか、何%だと思うか」と質問します。このように質問することで、「65%」という数値がアンカーとなります。

1-2.Bチームへは「10%よりも大きいと思うか?」と質問

 Bチームへは「国連に属している国のうちアフリカ 大陸にある国家の割合は10%よりも大きいと思うか小さいと思うか、何%だと思うか」と質問します。このように質問することで、「10%」という数値がアンカーとなります。

2.実験結果

2-1.「65%」というアンカーを提示したAチーム

「65%」というアンカーを提示したAチームの回答の中央値は、「国連に属している国のうちアフリカ大陸にある国家の割合は45%である」となりました。

2-2.「10%」というアンカーを提示したBチーム

「10%」というアンカーを提示したBチームの回答の中央値は、「国連に属している国のうちアフリカ大陸にある国家の割合は25%である」となりました。

3.補足説明

このアンカリング効果は推定対象への専門知識があってもアンカリング効果は消失しないことが示されています。また,アンカリング効果の特性についてあらかじめ警告していても効果は軽減されません。回答の正確さに応じて報酬を出すという条件でも軽減されないことが示されており、参加者が推定の際に大きな注意や努力を払うように促し ても消失させることは難しいことが報告されています。

アンカリング効果のアンカーは数値だけではなく単語もアンカーとなることがわかっています。例えば、自動車事故の映像を見て速度を推定する場合、「『突進してきた』車の速度は何㎞/hだと思いますか?」と聞いた場合と「『近づいてきた』車の速度は何㎞/hだと思いますか?」と聞いた場合では、「突進してきた」と聞いた場合の方が、推定速度が速くなります。

アンカリング効果の応用例

通販

テレビでよく見る通販番組は、アンカリング効果を活用した例と言えます。通販番組の典型的なパターンとして、「普段なら19800円のところを、今だけ1000円引き、9800円!!9800円!!」という流れがあります。これは、最初に高い値段を提示してそれがアンカーとなることで、値引き効果を大きくしお得な印象を与える効果があります。

アンケート 

様々なアンケートはアンカリング効果の影響を強く受けます。もし、アンケートを作成・回答する機会があれば、気をつけてください。上記の実験結果のとおり、アンカリング効果は参加者の注意や努力では払拭することができません。そのため、アンケートへの回答結果には必ずアンカリング効果が反映されていると考えるべきです。具体的には「アンケートの事前説明の中にアンカーとなる数字が含まれる」「質問の順番」「質問の文章・単語」などがアンカーとなります。

寄付の金額

寄付の金額にも、アンカリング効果の影響が表れます。寄付を募るときに、「『1円』から寄付を受け付けています」や「『最低●●円』から寄付を受け付けています」といったパターンがありますが、この「1円」や「最低●●円」がアンカーとなり寄付金額に影響を与えることがわかっています。「1円」がアンカーになると寄付金額が下がることになりますので、寄付を募る際は注意が必要です。

アンカリング効果の参考文献

 ⇒トリガー 人を動かす行動経済学26の切り口【参考文献紹介】

 ⇒think right【参考文献紹介】

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