歴史の終わり幻想とは
歴史の終わり幻想とは、自分の性格や価値観・好みなどの変化について、過去から今までの変化は認めるが、今から未来にかけては変化しないと考えてしまう錯覚のことです。
今の自分が完成形であり、今の状態が「歴史の終わり」であり、未来永劫今のままであるという「幻想」を抱いているということです。
人間は、これからも今まで通り変わり続けますが、多くの人はそれを理解していません。
「歴史の終わり幻想」は、ハーバード大学の心理学者、ダニエル・ギルバートが提唱した錯覚です。
歴史の終わり幻想の実験例
10年前に好きだったバンド
時間の経過によりどれほど人の好みが変化するかを確かめるために、以下の(a)(b)の質問を行いました。
(a)10年前、あなたはどのバンドのファンでしたか?今、そのバンドのコンサートのチケットを買うとしたら、あなたはいくら払いますか?
(b)今、あなたはどのバンドのファンですか?10年後にそのバンドのコンサートのチケットを買うとしたら、あなたはいくら払いますか?
(a)と(b)の金額を比較すると、(a)<(b)となり、平均して61%高くなるという結果になりました。
10年前に好きだったバンドには興味がなくなっているが、今好きなバンドは10年後も好きだろうと考える傾向があることがこの実験結果からわかります。
歴史の終わり幻想の例
もう若くないから…
大人になってから何か新しいことを始めようとしたり、何かに挑戦しようとした時に「もう若くないから…」という理由で諦めてしまうこと、ありませんか?
「何かを始めるのに年齢は関係ない」
「今日があなたの人生で一番若い」
と言った言葉により、やる気を出そうとすることがあると思います。
この、「もう若くないから…」という考えは「歴史の終わり幻想」によるものと言えます。
「今の自分はもう完成していて、これからはもう変わらないし変われない」という考えは、まさに「歴史の終わり幻想」です。過去から今までが変わり続けているように、これからも変わり続けます。
大きな買い物
ローンを組むような買い物、人生に何回かはあるかもしれませんが、そのような時に「歴史の終わり幻想」の罠に陥ると大変です。今の自分の感覚を過信して、これからもずっと同じ感覚だと思うと、後で後悔することがあります。
「こだわりの家」「こだわりの車」「こだわりのジュエリー」高価なものは色々ありますが、手に入れた瞬間が一番嬉しかったとならないよう、充分検討して購入した方が良いです。
取り返しがつかない決断をするときは、「歴史の終わり幻想」に十分注意しましょう。
歴史の終わり幻想と上手に付き合うために
人間は日々少しづつ変化しています。日々の変化は僅かなため、その変化には気づきにくいですが、数10年の単位で考えると、驚くほど変化しています。これが「歴史の終わり幻想」が生じる原因です。
「歴史の終わり幻想」と上手に付き合うためには、「過去から今までの変化と同じぐらいの変化がこれからも起きる」ということを理解する必要があります。過去から今まで、色々変化がありましたよね?それと同じような変化がこれからも起きます。
逆の発想として、趣味などで10年以上続いているものは、いくつありますか?何がありますか?おそらく、数えるほどしかないのではないでしょうか?人間は変わり続けているため、続かないことが普通です。10年続くということは稀であり、とても貴重です。10年続けることができれば、たいていのことについて一流になれるはずです。
そして、「歴史の終わり幻想」から学ぶべき教訓として、未来を予想できるという考えは幻想だということがあります。過去の人生で、自分の予想通りになったことがどれだけありますか?子供の時の夢を叶えた人はどれだけいますか?タイムカプセルの中身を見てびっくりした経験はありませんか?未来は予想できません。もし、予想できると思っているのであれば、それは「後知恵バイアス」による認知バイアスに気がついていないだけです。
未来は未知であることを受け入れ、未知の人生を楽しみましょう。