単純接触効果とは
単純接触効果とは、繰り返し見聞きしたものに対する好みや親しみが増す現象です。
単純接触効果の提唱者
単純接触効果は1968年にZajoncによって最初に提唱されました。
Zajoncは実験参加者の母国語ではない無意味な刺激(例えば漢字など)の単なる繰り返しの接触が、その対象に対する好感度を高めることを示しました。
単純接触効果の特徴
- 無意味な単純図形や単語列のようなものでも効果を検出することができる
- 単純接触効果の効果は嗜好の効果だけではなく、再認弁別や対象分類の能力が向上します。
- 単純接触効果は視覚のみならず、聴覚や味覚においても見られる。
- 単純接触効果の応用として、接触経験のある主張を、未知の主張と比較して正しいと判断する真実性効果があります。
- 単純接触効果は12歳以下の子どもでは検出されない
- 単純接触効果の効果を大きくするためには、対象の呈示を1秒以下にする必要がある
- 1つの刺激を連続呈示すると単純接触効果は得られない。他の刺激と混ぜ合わせると単純接触効果が得られる。
参考文献:知覚と感性(現代の認知心理学1)/三浦佳代編/北大路書房/2010年
単純接触効果の活用例
1.こまめに足を運ぶ営業マン
昔の営業マンのイメージは、靴を擦り減らしてお客様のもの元へ足を運び、顔を売ることが仕事とされていました。この行動は、単純接触効果を狙った営業活動と言えます。
営業マンが繰り返しお客さんの元へ通うことで、営業マンとお客さんが反復接触することになります。その結果、単純接触効果により、お客さんは無自覚のうちに営業マンへの好感度が上がります。営業マンへの好感度があがると、営業マンへがお勧めする商品への好感度が上がり、購買につながります。
2.ネーミングライツ(命名権)
企業や商品の名前を入れたスタジアム名を見聞きする機会が増えました。これは、ネーミングライツと呼ばれ、スタジアムの命名権を企業が購入し、企業側は宣伝効果があり、スタジアム側は命名権の対価として収入を得ることができる仕組みです。「スタジアムに好きな名前を付ける」と聞くと、一昔前なら金持ちの道楽のようなイメージがありましたが、これも単純接触効果を応用した例です。
スタジアム名に企業や商品名を入れることで、テレビやネットでのニュース、スポーツ中継なので繰り返しその名前を見聞きすることになります。また、ニュース等だけではなく、スタジアムへの案内標識や公共交通機関でのアナウンスなど、様々な場面でスタジアム名が案内されます。その結果、スタジアム名に入った企業名や商品名と、多くの方が無自覚のうちに反復接触します。そうすることにより、企業名や商品名の好感度を上げる狙いがあります。
3.ロゴ・マーク
ロゴマークは、一目でブランド名などが分かりとても便利でカッコいいですよね。服のワンポイント、家電のマーク、車のエンブレムなど、様々な種類があります。このようなロゴマークも、単純接触効果を活用して企業イメージの向上を狙ったものであると説明することができます。
身の回りにある製品のロゴマークをつけることで、そのロゴマークと反復接触することになります。周りを見渡してください。数え切れないほどのロゴマークが目に入りませんか?私たちは普段、これほど多くのロゴマークに囲まれて暮らしています。単純接触効果は、反復接触が無自覚でも効果があります。様々なロゴマークに無自覚のうちに反復接触することで、気づかないうちにその企業やブランドの好感度が上がっていくことになります。
ロゴマークが付いているものは商品だけではありません。無料でもらえる冊子やおまけのおもちゃなどにも、ロゴマークが溢れています。お子様セットの企業ロゴ付きのおまけのおもちゃ、年末にもらった企業名が入ったカレンダー、ポイントを貯めてもらった企業名入りのお皿、例を上げ始めるとキリがありません。
単純接触効果の実験
単純接触効果の実験として、映像を見せることである図形と好感度がどのように変化するかを調べた実験結果を紹介します。
参考文献:『選択と誘導の認知科学「認知科学のススメ」シリーズ10』/山田歩著/新曜社/2019年
1.映像を見せる
まず、被験者にある映像を見てもらいます。
この映像内には、1000分の1秒の非常に短い時間、ある図形を呈示しています。これは、非常に短い時間なので、被験者は図形画像が呈示されたことに気づかない状況です。
2.質問に答えてもらう
2-1.目の前に提示している2つの図形のうち、あなたが見た図形はどちらですか?
被験者に2つの図形を見せて、「あなたが見た図形はどちらですか?」と質問をします。
被験者は、図形を見たという認識はしていません。なので、当てずっぽうに回答することになり、正答率は50%になります。
2-2.目の前に呈示している2つの図形のうち、あなたが好きな図形はどちらですか?
被験者に2つの図形を見せて、「あなたが好きな図形はどちらですか?」と質問をします。
すると、実験内で見せた映像内で呈示した図形を「好き」と選ぶ人が多くなります。被験者本人は図形を見たということを認識していないのにも関わらずです。
割合としては60%程度になります。
3.結論
自覚していなくても、反復接触したものを好きになる傾向があります。
単純接触効果の参考文献
本書内では、単純接触効果について、図形との接触と好みの関係の実験について紹介されています。また、単純接触効果と合わせてサブリミナル効果についても解説されています。
⇒ファスト&スロー あなたの意志はどのように決まるか?【参考文献紹介】
単純接触効果について、本書内では学生新聞の広告の影響に関する実験や、単純接触効果が起きる理由などについて紹介されています。
⇒情報を正しく選択するための認知バイアス辞典【参考文献紹介】
本書では、単純接触効果について、「社会心理学的アプローチ」の項目で紹介されています。
講義への出席率と魅力の関係について実験や、日常生活への応用方法などについて記載があります。