自己標的バイアスとは
自己標的バイアスとは、周囲が自分に注目していると過剰に考えてしまう傾向のことです。自分が考えるほど周囲の人は自分のことを気にしていません。
自己標的バイアスの例
あがり症
あがり症の人は、自己標的バイアスの影響を強く受けている可能性があります。
「みんなが自分に注目している」
「こんなに注目されている状況で失敗したら恥ずかしい」
と考えて、緊張してしまうのでしょうが、実際は自分が思っているほど他人は注目していません。自己標的バイアスにより、実際以上に他人が自分に注目していると考え、緊張につながっています。
また、あがり症であることを失敗した時の言い訳として利用する「セルフハンディキャッピング」の影響も受けている可能性があります。
参考記事→セルフハンディキャッピングとは【失敗した時の言い訳を事前に自分で作る】
被害妄想
被害妄想とは、実際には何も起きていないのにも関わらず、自分に被害・危害が及ぼされていると考えてしまうことです。
「あの人が私の悪口を言っている」
「みんなが私を騙そうとしている」
と言った妄想のことです。
被害妄想も、他人の行動が自分を標的にしていると必要以上に感じてしまう「自己標的バイアス」による影響によるものと言えます。
また、一度被害妄想に陥ると、「確証バイアス」により、被害妄想が強化されてしまう可能性があります。被害妄想には、十分気をつけましょう。
参考記事→確証バイアスとは【自分を正当化する情報を集めたがる】
この中に○○な人がいました
「この中に○○な人がいました」と集団に対して言うと、多くの人が「自分のことを言っている」と感じます。これは、自己標的バイアスによるものです。
自己標的バイアスの実験例
2000年に心理学者のトーマス・ギロビッチらが、自分が着ている服に関する周囲の注目度に関する実験を行いました。
参考文献:ニュートン2023年2月号
実験の概要
参加者に特徴的なTシャツを着てもらい、周囲の人がそれにどの程度注目しているかを推測してもらう実験を行いました。
実験内容
参加者に「若者にあまり人気のないミュージシャンの顔が胸に大きくプリントされたTシャツ」を着てもらいました。
そして、アンケート調査に回答するために、ある部屋に入ってもらいます。
部屋に入ると4名程度の人が机の前に座って、すでにアンケートに回答する作業を行っています。
参加者はその4名程度の真向かいに座りアンケートの回答を行いますが、実験者にすぐに呼ばれて外に出ます。
その後、参加者に
「部屋の中でアンケート回答をしていた人たちのうち、何人が自分のTシャツのことを覚えていると思うか?」
と質問をしました。
実験の結果
参加者は「46%」の人が「自分のTシャツを覚えている」と予想しましたが、実際に覚えていた人の割合は「23%」でした。
また、後日、第三者にこの実験の様子を映像で見てもらい、Tシャツを覚えている人の割合を予想してもらった結果は「24%」でした。
この結果から、本人が気にしているほど他人はTシャツを気にはしておらず、第三者から見てもそれは明らかであることがわかりました。
自己標的バイアスと上手に付き合うために
まず、繰り返しになりますが、周囲の人は自分のことを誰も気にしていません。自分の些細な変化や失敗など、誰も興味がありません。
たまに見ている人もいるかもしれませんが、見ていたからといって何でしょうか?世の中にはたくさんの人がいて、たくさんの出会いがあります。
些細なことを気にするのではなく、視野を広くして生きていくことで、自己標的バイアスの影響を軽減し、幸せな人生につながる可能性があります。
自己標的バイアスの活用方法
「この中に○○な人がいました」という例は、様々な応用が可能です。
例えば、マナー違反の行動を注意喚起する場合に「○○というマナー違反の行動をしている人がいました。次見つけたら○○します。」のような注意喚起をした場合、
「自分のことを言っている」
「誰にも見られていないと思っていたのに」
と考える人が多数出てきて、効果的な注意喚起ができます。
また、逆に良いことを周知する場合にも使えます。
「すごく頑張っている人がいます」
「影で努力している姿はしっかり見ていますよ」
のような周知を行った場合、
「自分のことを見てくれている」
「これからも頑張ろう」
と感じる人が多数出てくると考えられます。
自己標的バイアスをよく理解し、是非上手に活用してください。